“海の歌”より Squall



空は海よりも広く
成層圏をこえて遠く宇宙まで広がってゆく
海はそんな空を見上げながら
決してとどかないとは知りながら
思いのありたけをこめて
その波の手をのばす

空はいつも海の上にあって
自分の青さを一面に受けとめている海を
はるか向こうまで見晴らしている
自分が曇れば同じように水面(みなも)くゆらせ
晴れわたれば同じように透きとおる海を
おそらく空は
いとおしく思っているにちがいないのだが

しかしどんなにしても
空は海に触れることはできず
海は空に触れることはできぬ
たがいにいつも向かいあいながら
一番近い存在のようでありながら
たとえどんなに慕い焦がれても
どんなに水平線の近くへ行っても

遠く幾千年もの昔から
空と海とは果てしなく
そのせつなさを繰りかえしている
…時に空から堕ちてくる雨の雫は
もしかすると空のせめてもの
海への優しさであるのかもしれない


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