そうして飛びたつ風のように



行ってしまう友よ
おまえはおまえを賭けて戦うほどの何を
その遠い眼差しの先に見ている
風の散りばむ光りを真に受け
無言で振り返るおまえの清冽な瞳に
もはやいくばくの余地もないことを
誰より深く身をもって知っているのは
私だと信ずれば信ずるだけ
おまえはたしかに行ってしまう

私は私を賭けて戦うほどに
強き思いの力を持たぬ
しかしいとしき我が友よ
おまえがおまえを貫くことを
おまえがおまえとして生きることを
私は命賭けて願いたい

私はおまえの帰りは待たぬ
又の出会いを期待はせぬ
しかしいとしき我が友よ
何処まで遠く
何時まで長く隔たろうとも
その両端で互いの歩みを信じながら
お前の歩みを感じながら
そうして生きてゆけるだろう

私はおまえを通して
おまえを包む大陸に触れるだろう
おまえの上の高空を仰ぐだろう
そして時折さやけく星に
おまえの声を聞くだろう
おまえは多分私を通し
この海風を聞くだろう

いつしか私の漠とした予感に沿うように
そうして飛びたつ風のように
おまえはたしかに行ってしまう
さらば…いとしき我が友よ

間もなく私もここを立ち去り
二度と戻りはしないだろう


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