だからせめて知らぬ間に



本当なら
しばりつけてでもあなたをここへとどめたい
何もものわかりのいいふりなどせず
血を吐くほどの激しさで
あなたの名前を呼んででも
その手をとらえ 肩をとらえ
たとえあなたが苦しもうとも
あなたをここへとどめたい
──行かないで──

けれどあなたの性(さが) こころの広がり
とどめることなどできやしないこと
閉じこめてしまえば鳥は鳥でなくなり
届いてしまえば空は空でなくなること
知っている
誰よりも
どんなに両手さしのべても
あなたのこころは私の腕をすりぬけてゆくこと

だからせめて知らぬ間に飛びたっていってしまわぬように
ずっとあなたを見ていたい
ずっとあなたを見ていたい…


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